こんにちは、ボードゲームブログ「うなボド」管理人のうなぎです。
「運任せの勝負には飽きたけれど、ルールが複雑すぎるのも疲れる」 「何より、『宝石の煌き』のような戦略性は好きだけど、もっと対戦相手と『バチバチ』にやり合いたい」
もしそう感じているなら、今日ご紹介する『ミドルエイジス(Middle Ages)』は、間違いなくあなたのためのゲームです。
テーブルに広がるのは、貴婦人や宮殿が描かれた美しい中世のパノラマ。一見、優雅で平和な箱庭作りに見えますが、その仮面の下には「泥沼の殴り合い」が隠されています。ここでは、丹精込めて築いた街が一夜にして「墓地」へと変わり、相手の嫌がる一手を見抜く「大人の駆け引き」が勝敗を分けます。
ただ自分の庭を愛でるだけでは勝てない。ルールは驚くほどシンプルなのに、性格が丸裸にされるようなヒリヒリした領主体験が待っています。 この記事を読み終える頃、あなたのボードゲーム観は「優雅な戦略戦」へとアップデートされているはずです。それでは、美しくも残酷な中世の世界へご案内します。
この記事は「ゲーム紹介記事」です
より詳細なルールを知りたい方は、こちらのルール解説記事をご覧ください。
基本情報
- プレイ人数:2〜5人
- プレイ時間:約45分
- 対象年齢:10歳以上
『ミドルエイジス』ってどんなゲーム?
「移動してタイルを取る」ただそれだけなのに、なぜこんなに悩ましいのでしょうか。このゲームの骨格を少し掘り下げてみましょう。
■ ゲームの目的(勝利条件)
このゲームの目的は、中世の領主となり、ゲーム終了時にもっとも多くの「コイン」を所持していることです。
■ どんなゲーム?
美しい建物のタイルを並べて、自分だけの立派な領土を作り上げる「街作り」ゲームです。 名作『宝石の煌き』のように「資産を増やしていく喜び」と、「相手が欲しがるものを先取りする」という熾烈なドラフト戦が見事に融合しています。
■ ここがポイント
このゲームにはサイコロはありません。小難しいテキストを読む必要もありません。 必要なのは、「どの建物を取れば一番儲かるか?」という少しの計算と、「あの場所は相手も狙っているかも……」と相手の嫌がる顔を想像する優しさ(?)だけです。
3ステップでわかる! ゲームの流れ
プレイヤーは領主となり、以下の3つのステップを繰り返して領土を拡大していきます。 シンプルな遊び方の中に、強烈なジレンマが詰まっています。
① 移動と獲得:狙った獲物を確保する
まずは自分の領主コマを動かします。 この動きには、「次ラウンドの手番順の確保」と「現在の建物の獲得」という2つの重要な意味があります。 「次はあそこの畑が欲しいな」「あっちの兵舎に行けば相手を邪魔できるな」と考えながら、次に自分が向かうべきタイルを選んでコマを進めましょう。
② 配置と効果:領土を広げ、能力を発動する
手に入れた建物タイルを、自分の「領地ボード」の決まった場所に配置します。 建物にはそれぞれ、「畑」「市場」「兵舎」「村」などの役割があります。配置することで「他プレイヤーを攻撃する」「墓地の建物を復活させる」といった強力な特殊効果が即座に発動します。
特に「村」の効果は重要です。敵の攻撃などによって破壊されてしまった建物を回収・再利用する効果を持ちます。 同じ種類の建物をたくさん集めるほど、その効果はより強力になっていきます。
③ 収入:街の発展度合いに応じてコインを得る
建物を配置したら、直ちにその恩恵としてコインを受け取ります。 このゲームの最大の特徴は、「建物を置くたびに収入が入る」ことです。
例えば「市場」を置けば、今回配置したそのタイルと、すでに持っている市場や関連施設の合計数に応じて、大量のコインが手に入ります。 「拡大再生産」の名の通り、ゲームが進むほどに獲得できるコインの枚数は雪だるま式に増えていくでしょう!
ここが凄い!優雅な見た目に隠された「大人のスパイス」
『ミドルエイジス』の外箱やコンポーネントを見ると、中世の平和な街づくりゲームに見えるかもしれません。しかし、その実態は「ナイフを隠し持った貴族たちの泥沼の蹴り合い」です。 シンプルなのに奥深い、優雅なのに残酷。このゲームがなぜ、これほどまでにゲーマーの心を揺さぶるのか。その理由を3つの視点からレビューします。
1. 「ルール疲れ」知らず。驚くほどシンプルな手順と没入感
ボードゲームにおける「面白さ」と「ルールの複雑さ」は比例しません。このゲームの最大の功績は、「テキストを読むストレス」を完全に排除し、純粋な思考戦に没頭させてくれる点にあります。
やることは極めてシンプルです。「欲しいタイルの場所にコマを動かす」「タイルを取って配置する」。たったこれだけ。カードの効果を読む必要も、複雑なフェーズ管理もありません。しかし、この単純なサイクルの裏側には、脳内でドーパミンが溢れ出す仕掛けが隠されています。
- 配置即収入の快感
多くのゲームでは「生産フェーズ」まで待たなければ収入が得られませんが、このゲームは「タイルを置いた瞬間に」効果と収入が発生します。 - コンボが決まる「ザクザク」感
例えば、「畑」を置けば既存の農夫の数だけコインが入りますし、「市場」を置けば水車との相乗効果で大量得点になり……と、序盤に仕込んだ種まきが後半に爆発します。一度の手番で大量のコインがジャラジャラと手元に入ってくる瞬間、「あぁ、今の俺の領地、エンジンが回ってる!」という全能感を味わえるでしょう。
言語依存がないため、アイコンだけを見て直感的にプレイできる。だからこそ、相手の盤面を見る余裕が生まれ、より深い駆け引きへと意識を向けられるのです。
2. 「そのタイル、欲しかったのに!」相手の計画を崩す高等戦術
もしあなたが「誰にも邪魔されず、自分のペースで箱庭を作りたい」と願うなら、このゲームは劇薬すぎるかもしれません。逆に、「相手の悲鳴こそが最高のBGM」と感じるプレイヤーには、至高の時間が約束されています。 このゲームのドラフトは、単なる早い者勝ちではありません。そこには強烈なインタラクションが存在します。
- 視線で殺し合うドラフト
全ての情報は公開されています。「あいつは次、絶対にあの兵舎を取りに来る」。そう読めた瞬間、あなたは自分の利益を多少犠牲にしてでも、先回りしてそのタイルを「妨害」したり、「城壁」の効果で偵察コマを使って「予約」し、相手の鼻先で扉を閉ざすことができます。 - 物理的な殴り合い
特に「兵舎」の効果は凶悪です。自分の兵舎の数が相手の城壁の数より多ければ、相手の領地ボードの先頭にあるタイルを問答無用で破壊し、さらに賠償金まで奪います。
「お前、まさかそれ取る気じゃないよな?」という無言の圧力がテーブル上を飛び交う瞬間。そして、狙い通りの妨害が決まり、計画が崩れた相手が頭を抱えるのを見た時の「軍師的な達成感」。このヒリヒリとした緊張感こそが、ただのパズルゲームにはない『ミドルエイジス』の真骨頂です。
3. 所有欲を満たす「タイルの重み」と、完成した盤面の「パノラマ感」
ゲームが終わった後、勝敗を超えてプレイヤーを包み込むのは、「自分の領地が完成した」という圧倒的な美的満足感です。 ペラペラのカードではなく、厚みのあるタイルを個人ボードにはめ込んでいく感触は、物理的な所有欲を満たしてくれます。そして何より、システムとアートワークの融合が見事です。
- 機能美としてのパノラマ
このゲームには「8種類全ての建物エリアを最低1枚は埋めないと、欠けたエリア1つにつきマイナス10点」という強烈なペナルティがあります。これはルール上の制約であると同時に、「バランスの取れた美しい街を作りなさい」というデザイナーからのメッセージのように思えます。 - 最高の瞬間
苦しいドラフトと妨害合戦をくぐり抜け、畑、村、教会、宮殿……と全てのタイルがピタリと繋がり、自分だけの領地が一枚の絵巻物として完成した時。盤面を眺めて思わず「うわ、これめっちゃ綺麗……」とため息が漏れるはずです。
「優雅な見た目に反して、中身は泥沼の殴り合い」。しかし、戦いが終わればそこには美しい王国が残る。この「心地よい疲労感」と「視覚的な癒やし」のギャップこそが、何度でも遊びたくなる中毒性を生み出しているのです。
人を選ぶ点・注意点
『ミドルエイジス』は、その美しいコンポーネントとパノラマのように広がる領地ボードから、一見すると「自分のペースで優雅に街を作るゲーム」に見えるかもしれません。しかし、その認識のまま遊ぶと間違いなく火傷します。 購入後に「こんなはずじゃなかった」とならないよう、あえて厳しい側面をお伝えします。
1. 「箱庭作り」だと思って遊ぶと、心を折られます
このゲーム最大の特徴であり、同時に最も人を選ぶ点が「直接的かつ鋭利なインタラクション」です。
- 兵舎による破壊
他プレイヤーのタイルを「墓地」に送り、さらに金を奪う効果があります。「せっかく育てた街を壊される」というストレスは、箱庭系ゲームを好む人にとっては耐え難いものです。 - 水車による徴税
他プレイヤーから直接コインを奪います。 - 城壁による予約
相手が欲しがっているタイルを先にブロックする動きが定石となります。
もしあなたが、「誰にも邪魔されず、自分の理想の街を完成させて点数を競いたい」というソロプレイ感を求めているなら、このゲームは向きません。雰囲気が悪くなる可能性があります。
逆に言えば…… 『カタン』の盗賊や『宝石の煌き』のキープアクションで「相手の悲鳴を聞くとゾクゾクする」というタイプの人には、これ以上ないご馳走です。表面上は貴族として振る舞いながら、水面下で足を蹴り合うような「性格の悪い駆け引き」が大好きなメンバーとなら、最高の盛り上がりを見せるでしょう。
2. 「サクサク感」だけを求めると、後半の長考に疲れるかもしれません
序盤はタイルも少なくサクサク進みますが、後半になると、考慮すべき要素が指数関数的に増えます。
- コンボ計算
「これを置くと畑で◯金入り、連鎖してイベント効果で……」という計算が必要になります。 - カットの読み合い
「自分がこれを取ると、次の手番順であの人があれを取って大量得点してしまう」といった、3手先までのパズル要素が発生します。
そのため、ガチ勢同士で遊ぶと後半に沈黙が長くなる傾向があります。「ワイワイと会話を途切れさせずにパーティー感覚で遊びたい」というグループには、少し重苦しく感じる瞬間があるかもしれません。
逆に言えば…… 「運任せではなく、自分の頭脳でコントロールしたい」という思考型ゲーマーにとっては、この長考こそが至福の時間です。ジレンマに脳を焼かれる感覚を楽しめる人には、心地よい疲労感となるでしょう。
まとめ:「運ゲー」を卒業し、「実力」で殴り合いたいあなたへ
『ミドルエイジス』は、見た目の美しさとは裏腹に、中身はナイフを隠し持った貴族たちが泥沼の蹴り合いをするような、非常にゲーマー向けの鋭い作品です。
- 向いている人
『宝石の煌き』や『マジェスティ』が好きだが、「もっと相手との絡みが欲しい」「直接的な攻防を楽しみたい」と感じていた人。 - 向いていない人
攻撃要素で不機嫌になる人がいるグループ、純粋な拡大再生産だけを楽しみたい人。
「ただ綺麗なだけ」のゲームには飽きてしまった。 そんなあなたのボードゲーム棚に、この美しくも残酷な一箱を加えてみてはいかがでしょうか?
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ミドルエイジスと同じデザイナーであるマルク・アンドレ氏の最高傑作「宝石の煌めき(Splendor)」の紹介記事です。このゲームを遊ばずしてボードゲームは語れない。


